腕時計の発展を牽引する現代の優れたクロノグラフを、ウオッチナビが厳選して紹介する新連載。今回は、時代に合わせたイノーベーションと伝統的なスタイルを重んじる、技術練度の高い3ブランドから代表的なクロノグラフをセレクトした。
世界で初めて発表された自動巻きクロノグラフの革新性を21世紀へ
自動巻きクロノグラフの開発競争が激化した1969年、ゼニスはいち早く1月に「エル・プリメロ」(世界初のクロノグラフ専用自動巻きムーブメントを搭載)を発表したが、発売開始したのは同年秋だった。当初から毎時3万6000振動というハイビートを売りにしたものの、クオーツに押されて製造は一時中止に。しかし機械式時計に再び脚光があたったことで、1984年に再開されて現在の成功に至る。その凄まじい革新性を21世紀に伝えるのが、「デファイ エル・プ リメロ21」。機械式の最先端テクノロジーをアピールするべく、時計用とは別に毎時36万振動のクロノグラフ用脱進機を備えているのが特徴だ。
航空黎明期からの歴史を体現するタイプ52回転計算尺を装備
回転計算尺(簡単な掛け算や割算を計算できる機能)はアメリカ海軍のウィームス大佐が考案したもので、パイロットは飛行中に膝の上に乗せて回し、クロノグラフと併用することで飛行データ(飛行距離や速度、燃料の残量など)を算出しながら空を飛んでいた。これを応用した航空用タイプ52計算尺をそのままクロノグラフに組み込んだのが、1952年初出の「ナビタイマー」だったわけだ。航空史におけるシンボリックな機能と意匠を継承した現行仕様は、自社製ムーブメントを搭載することで、精度や信頼性などすべての面でアップグレードされている。
古き良き1950年代の2つ目クロノグラフを時代感とともに再現
プレスリーが初めてビルボードの1位を飾り、イームズのラウンジチェアやグレース・ケリーのウェディングドレスが人気を博した1956年、スイスにある高級時計の老舗、カール F.ブヘラが時代の最先端を行くクロノグラフを発売した。そのエレガントなデザインを継承しつつ、より存在感を発揮する41mmサイズへと拡大。2カウンターの伝統的フェイスに、ビッグデイトと年次カレンダーという複雑かつ実用的な機能を追加することで、魅力をさらに高めた。世界限定888本という希少性も見逃せない。