LVMHグループによるティファニー買収が実現したら、時計界はどうなる?

LVMHグループがティファニー(※1)に買収の提案を申し出たというニュースが駆け巡った。LVMHグループとは正式名を「モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン」(※2)とする巨大コングロマリット企業で、時計やアクセサリーから酒類まで、あらゆる高級嗜好品のブランドを傘下に収める。時計では、グループ筆頭であるルイ・ヴィトンほか、ゼニス、タグ・ホイヤー、ディオール、ショーメといったハイブランドが所属している。近年では、2008年に時計界のカリスマ経営者=ジャン-クロード・ビバー氏も経営陣に加わる形でウブロが、2011年には創業以来一族経営を保っていたブルガリも参加している。これら鮮やかなまでの買収劇には、LVMHグループの圧倒的な資本力とベルナール・アルノー会長の手腕によるところが大きいと推測できる。

LVMHグループによるティファニー買収案は、一部のニュースサイトによるとブルガリが仲介役を果たした(ティファニーには元ブルガリの人脈があるため)のではないか、と報じられている。もしも買収が実現したならば、時計界にどのような事象が生じるだろうか? 少し予想してみよう。

これまでのティファニーと時計メーカーの関係

まず話の前段として、ティファニーは2007年にスウォッチ グループ(スウォッチをはじめ、オメガやロンジンなどが参加するスイス最大の時計グループ企業)と提携したことがあった。しかしその関係は長く続かずに仲違いしてしまったが、当時のティファニーは現在ほど時計のコレクションが豊富ではなく、その改善も含めてスウォッチ グループに協力を求めたのだと考えられる。ティファニーとしてはスウォッチ グループの技術的なサポート(とくに傘下のETA社からのムーブメント供給)を受けられるため、かなりのメリットがあったに違いない。ちなみに、ティファニーと同じくアメリカにルーツを持つダイヤモンドの老舗「ハリー・ウィンストン」は、2013年にスウォッチ グループの傘下に入り、現在もその関係を維持している。ティファニーとスウォッチ グループの提携解消は2011年のことだったため、ハリー・ウィンストンはその後に協力を結んだことになる。

夢のあるコラボウオッチが誕生する可能性も!?

その後、再び独立企業として歩み始めたティファニーは、ETA社のジェネリック・ムーブメントを製造するセリタ社を中心にムーブメントの供給を受け、一部を自社製で賄っている。もちろん現在の図式でも時計を作り続けることはできだろう。しかしメジャーブランドの多くがグループへの所属や提携を結ぶ現在、ティファニーのように世界的ネームバリューを持つブランドが腕時計で発展を遂げるには、巨大グループと関係を持つことが不可避となりつつある。数々の時計ブランドを成功へと導いたビジネスモデルのあるLVMHグループの傘下に入ることは、ティファニーのウオッチにとってはプラスに働く可能性の方が高いのである。

具体的には、同グループ内のパーツ共用が可能になることで高性能化やコストパフォーマンスが改善される。かつてタグ・ホイヤーやブルガリで実現したように、ゼニスのエル・プリメロキャリバーを搭載するティファニーウオッチが誕生することだってあり得る話だ。またこれを機に、リシュモン(カルティエをリーダーとし、ヴァシュロン・コンスタンタンやジャガー・ルクルト、ピアジェなどの老舗マニュファクチュールほか、数多くの時計ブランドを擁する)や、ケリング(グッチ、ジラール・ぺルゴ、ユリス・ナルダンを傘下に収める)が、同様にティファニーをターゲットとする可能性も否定できない。

果たしてさらなる時計界の再編は訪れるのか? それによる恩恵を受けるブランドはどこか? 今回の出来事は、市場関係者や投資家だけではなく、時計ファンとしても見逃せないM&A群像劇といえる。

 

※1「ティファニー」は1837年9月18日にアメリカで創業。クリスマスに贈る「オープンハート ネックレス」などの宝飾品、および銀製品の世界的なブランドとして知られる。時計の歴史も古く、1847年から製造・販売をスタート。1853年には、ニューヨーク本店のシンボルであるアトラス像に担がれた「アトラス・クロック」を設置した。コレクション「CT60」は、フランクリン・ルーズベルト大統領が愛用した時計をモチーフとしている。

※2「LVMHグループ」は、ラグジュアリービジネスの世界的な権威とされるフランスの一大企業。中核ブランドであるルイ・ヴィトンは、2002年に初めて本格時計「タンブール」をリリース。以来、時計界出身ではない自由な発想のクリエイションを生み出し、遂にはスイス・ジュネーブに自前の時計製造アトリエを設立。複雑時計のマニュファクチュール化も果たしている。LVMH傘下には世界の錚々たる高級ブランドが名を連ねており、時計だけでもウブロ、ゼニス、タグ・ホイヤー、ブルガリ、ディオール、ショーメなどがある。

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